先日、一通の手紙が届いた。
昔、ヒッチハイクで乗せてくれた人からだった。
「旅を終えて、僕らは北海道に住むことにしました。」
確か、滋賀県あたりで乗せてくれたトラックの運転手だった。
彼は僕の二つ上で高卒後ずっと中距離トラックの仕事をしていると言った。
その後何度かメールのやり取りをしていたから、彼のことはよく覚えていた。
彼は乗せてくれたとき、こう言った(誰もがもれなくいう言葉でもある)。
「きみは本当に自由だね。うらやましいよ!」
僕は認めた上で、この人なら話してもいいかな、と思って素直に話した。
「僕が知る限り、ほとんどの人が自由ですよ」
今している仕事も、休日の過ごし方も、
住んでいる場所も、結婚も、趣味も、
「結局は自分で決めていること」
他人や社会からの制約はもちろんあるけども、
それを無視しても生死に関わるようなことなんてほとんどない。
(変な法律はいっぱいあるけども、個人の自由を一方的に奪うほどの悪法はないと思う)
僕は今まで見てきた人々の話をした。
産まれながら家もなく、服も靴も与えられなく、ゴミ置き場で生活する人々。
身体を売ることが唯一家族の最低限の生活を保障される人々。
外では銃弾が飛び交い、空から爆弾が降ってきて、空き地には地雷が埋め込まれている故郷に住む人々。
あのとき、そんな話を簡単にして最後にこう言った
「僕が知っている限り、この国のほとんどの人は自由です。
だって、仕事辞めても誰も殺さないし自分も死なないですからね(笑)
他人のせいにしてますけど、自分で自分の自由を奪ってるんですよ、きっと」
他にもいろんな話をした気がするけど、彼はこの1か月後仕事を辞めた。
そして、こんなメールが来た。
「彼女と日本一周に出ることにしました!また、どこかで会えるかもしれないですね!!見つけたら乗せてあげるね(笑)」
彼女さんは先天性の障害で下半身付随。
彼はあのとき「最近、仕事が忙しくてどこにも連れて行ってあげれない」と嘆いていた。
その二人は2年半もの間、車で日本一周をして先月、結婚。
北海道の自然と人に惹かれて、来月から北海道で民宿を経営する。
手紙にはこんなことも書いてあった。
「旅をしている最中、彼女も俺もいろんな仕事をしてみました。
彼女は自分が思った以上にいろんな仕事ができるんだと気づいたのが一番うれしかったみたいです。俺もそれが一番うれしかった。今はアクセサリー作りにハマっています。」
そんなわけで、今日も僕は自由です。