「ここは天国だ」
一日、周防大島と沖家室を案内してくれた西山喬さんは
沖家室の小さな港で遠くを見て、つぶやいた。
いろんな土地を旅しながら
見たこともない、他にはないような景色をたくさん見てきた。
沖家室もまた日本に残る数少ない人間と自然の近い町。
しかし、それだけでここが天国だとは正直思わなかった。
島を町を一日めぐり、西山さんと別れ、
寝る前にひとり今日のことを振り返った。
小さな波の調べに、静かな風の音
遠くで船が動いている
目の前で自然の恵みを受け取る島民がいる
西山さんが笑っている。
美しき自然や人々の営みの素晴らしさだけではなく
自分だけの物語を通してこそ、
天国も楽園も築かれていく
西山さんに出会い、教わりました。
僕は西山さんと初めて会い、数時間しか一緒ではなかったから
西山さん自身の物語は何も知らない。
それでも、西山さんが
案内してくれた景色、説明するときの言葉選び
景色を眺める瞳、説明するときの表情は
僕に多くのことを語ってくれた。
物語を通してこそ
その土地と人々は深く結びつけられるのだろう
周防大島も沖家室も、
西山さんに案内してもらったことで
僕の心に深く刻まれることになった。