雲ノ平への旅 3日目前半 〜原生林と渡渉〜

<雲ノ平への旅 3日目前半 〜渡渉〜> 2021.10.6

雲ノ平~高天原~高天原温泉~岩苔乗越~三俣山荘 テント泊

 

強風とテントに叩く雨音で目が覚める。

このトレイル唯一の雨だ。

日本でロングトレイルをする際、雨は避けられない。

しかし、この雨が日本の豊かな自然を作り出している。

もちろん、この雲ノ平に高山植物が生き残れる理由もこの豊富な雨のおかげだ。

 

テントの中で朝ごはんを作る。

朝ごはんは決まって味噌汁とおかゆにしている。

身体を温めるには味噌汁が一番だ。

粉末のあご出汁と、切り干し大根、乾燥わかめ、とろろ昆布。

それに自家製の味噌汁を溶かして飲む。

 

内臓に染み渡る。

その言葉以外、表現方法が見つからない。

1日の中で一番寒いこの時間帯に最適な飲み物だろう。

体の内側から一気に体温が上がる。

外側から温めることができないテント泊旅ではこれが一番効く。

 

朝ごはんを済ませて、着替えを済ませると

意を決して外に出て短時間でテントを撤収する。

ちょうど雨が弱くなったタイミングを見計らって。

そして、そのままバックパッキングを済ませて歩き出す。

今日の目的地は今回の旅のメインの一つ温泉だ!

 

日本一遠い温泉と呼ばれる高天原温泉だ。

雲ノ平同様、どの登山口からも2泊3日ないと往復できないところにある

野外温泉の一つだ。

 

前日、登山客からこの温泉に入れないという話を聞いた。

どうやら温泉の管理をしているのが温泉から20分の距離にある高天原山荘で、

その山荘が少し前に今年の営業を終えたため、湯船の栓が外されているという。

この話を聞いた私は、さらに行きたくなった。

というのも、野外温泉なら湧いていないわけはないということ。

それと、それならなおさら人がいないということだ。

 

もともと、人がいない山奥に行きたいという思いから山を旅するようになった私には、

この北アルプスは人が多すぎるのだ。

それに今日のルートは原生林を歩く。なおさら人がいない方が良い。

 

山荘が見えなくなると、人の跡よりも野生動物の跡が増えてくる。

原生林に近くなればなるほど、野生動物との距離は近くなる。

ときにはすぐ近くで鳥が飛び立ち、驚くこともある。

臆病で人には目につかないところにいつもいる熊が、登山道のすぐ近くで木の実を食べ散らかす。

どんなに登山を繰り返してきた人でも、緊張は少しずつ高まる。

どんなに熊をたくさん見たことがある人でも、覚悟を持つ。

 

登山道は森林限界を後にし、原生林に入っていく。

下りがメインだが、道の険しさと自然の厳しさを身体に感じながら進む。

原生林にはどこにもない静けさがある。

その静けさを始めて体験した人はそれを恐ろしく感じる。

今までに経験したことがない静けさだからだ。

都会にも、里山にも、その辺の山岳にもこの静けさはない。

原生林にしかない静けさがある。この静けさを悠久の時間と表現したのが星野道夫さんだ。

一度はこの静けさの中で過ごしてもらいたい。

 

静けさに包まれて、コーヒーを飲みながらひと休憩を入れる。

すると、遠くから鐘の音が聞こえてくる。

前日の夜に聞こえていた鐘の音だ。

今思い出すと、不気味な気もするがこのときは不気味さを感じなかった。

なぜなら、いつも距離が同じだからだ。

見守ってもらっている。そんな感じがした。

 

原生林を抜けて、広葉樹林帯を進む。もうすぐ高天原だ。

すると、川幅10メートルほどの河にあたる。

河を渡る橋を探す。しかし、橋は撤去されていた。

そう、山荘が閉まると同時にこの橋も撤去されていたのだ。

その情報は聞いていなかったのだが、後から聞いた話によると

この北アルプスの登山道にはそういった橋が多いそうだ。

 

仕方ない。川を渡ろう。

日本の登山道には渡渉するチャンスはほとんどないが、

海外の原生林を歩くトレイルではよくあることだ。

できるだけ底が浅いところを、捕まる大きな岩があるルートを見極める。

登山靴からサンダルに履き替え、ズボンの裾を膝までまくる。

あとは決意を固めるだけだ。

この時期の川の水は触るまでもなく、冷たい。痛いくらい冷たい。いや、痛い。

 

こういうとき、大切なことは一歩一歩確実に足を入れていくこと、

早く渡ってしまおうと焦らないこと、

かといって、ゆっくりしすぎると体力を失ってしまう。

大胆かつ冷静に。そんなことを考えながら足を入れていく。

これもいろんな山で川に落ちた経験から得たものだ。そう何度も川に落ちている。

 

川を渡り切ると安心した気持ちもあるが、足が解放された喜びも大きい。

手ぬぐいで足の拭き、登山靴に履き替え、先に進む。

少し時間をロスしてしまった。

今日のルートは4日間で一番長い。だからこそ、あまり時間を無駄にしたくない。

少し足早に道を行くと、また橋が撤去された川に着く。

 

おいおい、またかよー!と言いながらも素早く靴下を脱ぐ。

先ほどよりも川幅は狭く、水量も少ない。

水面から出た岩を渡ることも考えたが、以前同じような場面で川に落ちたことがある。

だからこそ、渡渉は一番確実な方法を選んだ方が良い。

身体や荷物を濡らしてしまうことは体力を消耗するだけではなく、ときには命に関わる。

めんどくさいという人間の都合は自然には関係ない。

 

つづく

Profile

 

そのまんま、自己紹介です♪

Journey's Diary

 

大学卒業後、国内国外旅してきて

 

撮り続けた写真と綴ってきた言葉を

まとめたものです

 

長くて多いので

暇な時に読んでください♪

Book of my journey

 

ひとり旅をはじめてから

カメラとノートを

常に持ち歩くようになりました。

 

その風景写真と短い言葉たちを

アメブロにて公開していました。

そのページをまとめたものです。

 

これまたたくさんあるので

暇つぶしにしてください。

Woodworking

 

木をメインにした工房【旅をする木】の

作品集やものづくりへの想いを

ここにまとめています。

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