雲ノ平への旅 3日目後半 〜日本一遠い温泉〜

<雲ノ平への旅 3日目後半 〜日本一遠い温泉〜> 2021.10.6

雲ノ平~高天原~高天原温泉~岩苔乗越~三俣山荘 テント泊

 

二度の渡渉を終え、あと少しで温泉にたどり着く。

朝の雨雲はもう過ぎ去ったようだ。

次第に空に明るさを感じるようになる。

 

太陽光が注ぐと一層広葉樹林帯の美しさが増す。

山の朝はとびきり美しい。

 

ナナカマドの他に赤く染まる低木がある。

クロマメノキだ。

名前はおそらく熟した実が黒豆に似ているからだろう。

しかし、樹木自体はマメ科ではなくツツジ科である。

そして、ブルーベリーの仲間らしく熟した実の味はブルーベリーそのものだ。

 

この季節の山歩きではこれほど美味いものはない。

ときに登山道の両脇にクロマメノキが立ち並ぶエリアがある。

そんなときはなかなか前に進めない(笑)

歩調を少し抑えながら、両手を次から次へと伸ばしていく。

十分に熟した実ほど甘く、酸味が少ない。

だから、真っ赤に染まった木か葉がすでに落ちた木を狙い撃ちする。

こうして一気に全ての実を取らないからこそ、他の野生動物たちにも行き渡り、

種子散布が行われて行くのだろう。

人間が行なっている農業とは真逆である。

 

山を少し下って行くと流れる小さな沢に綺麗な白い鉱石がキラリと光る。

水晶のカケラだったり、水晶になりきれなかった鉱石だ。

この沢の水源には水晶岳がある。

その名の通りたくさんの水晶が見つかる山である。

 

いくつかの沢を渡ると大きな川の音が聞こえる。

そして、硫黄の匂いが漂う。もう温泉は近い。

 

温泉は大きな川の横から湯気を出し、流れていた。

青白く濁った源泉は少し熱いものの入れなくはない熱さだ。

高天原山荘が管理している湯船は栓が抜かれており、お湯も流れていないため入れないが

源泉が湧いて作り出した小さな穴に足湯や腰湯で入ることができる。

久しぶりのお湯はロングトレイルを歩く上でありがたい自然の恵みだ。

 

毎日お風呂に入る習慣のある日本人にとって、

温かいお湯に浸かれることほどありがたいことはない。

日本一遠い温泉を独り占め。

次は山荘が空いているときに来よう。こんな良い温泉に浸かってすぐに寝たい。

これからまだ4時間以上の道のりがあると思うと少し嫌な気になる(笑)

 

温泉から出る頃には青空が見えてきた。

高天原の名にふさわしい光景が広がる。

荒野にそびえる常緑樹たち、黄金色に染まる広葉樹たち、剥き出しの岩肌。

悠久の時間にある今しかない瞬間は旅人の足を止める。

 

ここから峠越えのルートを行く。

左に水晶岳、右に雲ノ平の原生林の道を行く岩苔乗越だ。

前日に昼食をとりながら見下ろしていた美しき樹林帯である。

おそらくずっと昔にここには氷河があり、その氷河によって削り取られたカールのような地形である。

水は豊かで日当たりも悪くないために広葉樹林が広がる。

 

標高が上がるたびに、後ろを振り返るたびに

写真を撮りたくなる景色がある。

毎回毎回、見える景色が変わっていく。

どのタイミングでも逃したくないほど美しい。

 

登れば登るほど水は清くなり、冷たくなっていく。

目指す峠に小さな人影も見える。

今日1日の間、誰にも会っていない。足跡もほとんど残っていない。

クマやリスたちの痕跡はたくさん発見できる。

 

そんなルートでもやはり、常にあの鐘の音は聞こえてくる。

もう不気味さを感じることはない。

ここまで一緒に来た気持ち良さがある。

 

峠を登りきると今通ってきたルートの全貌が見える。

一歩一歩、進んできた道を振り返るのは山旅の醍醐味の一つでもある。

誰かから褒められるわけでもないし、認められるわけでもない。

だけど、確実に自分の身体にその道を歩んだことが刻まれている。

それがなんだか誇らしいのだ。

 

これから行く先には今日のテント泊予定地の三俣山荘が見える。

前日に通った黒部源流まで一気に下り、最後30分ほど登る。

到着した頃には太陽は傾き始め、風が冷たくなっていた。

この日は山荘での夕食を頼んだ。ジビエの鹿のシチューだ。

これを楽しみに今日は朝早くから長い距離を歩いてきた。

日本の山荘にはこうやってご飯を用意してくれるところが多い。

 

食後には三俣山荘の歴史のスライドショーを見ながら、サイフォンコーヒーをいただく。

今回の山旅の目的を無事に終えたことにひとり祝福しながら、今日1日を終えた。

Profile

 

そのまんま、自己紹介です♪

Journey's Diary

 

大学卒業後、国内国外旅してきて

 

撮り続けた写真と綴ってきた言葉を

まとめたものです

 

長くて多いので

暇な時に読んでください♪

Book of my journey

 

ひとり旅をはじめてから

カメラとノートを

常に持ち歩くようになりました。

 

その風景写真と短い言葉たちを

アメブロにて公開していました。

そのページをまとめたものです。

 

これまたたくさんあるので

暇つぶしにしてください。

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木をメインにした工房【旅をする木】の

作品集やものづくりへの想いを

ここにまとめています。

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