<くじゅう連山 原生林では嘘をついてはいけない>
@黒岳原生林・九重連山 2023.05.29
「原生林では嘘をついてはいけない」
そんな風に原生林について説明することがある。
原生林でゆっくり過ごすことが、暮らしの一部になることが本当に嬉しい。
それと同時に原生林への旅、独特の緊張感がある。
本来、原生林は人里から最も遠く離れたところに佇む。
だから、その場を旅するということは特異なことだ。
体力も必要だし、装備も充実してなくてはならない。
スケジュールの余裕も、精神的な余裕も必要だ。
経験がモノをいうときもあるし、事前の計画性が肝のときもある。
そして、何よりも「嘘をついてはいけない」のだ。
人間社会はいわば、嘘が作った嘘の塊である。
それは哲学的に言えば「虚構」であり、社会的に言えば「保証」だ。
人間社会では嘘をついても生きていける、ように文明が発展した。
しかし、そこから一番遠い原生林にはその嘘は全く通用しない。
原生林の中では嘘をついてしまえば簡単に遭難や死に逢うことになるだろう。
みなさんを案内する原生林への旅は、そういったリスクは最小限に抑えられる場所だが、
全くないとは口が裂けても言えない。
自然を相手にするということは本来、そういうことなのだが
自然を支配するために発展した文明はそういう側面をうまく隠してしまう。
だから私たちはずいぶん時間が経った後に、後悔をしてしまう。
原生林への旅はたとえ気軽に訪れることができる場所だとしても、
そこにたどり着ける人は限られていると思う。
その日その場に立つまで、どれだけ嘘をつかないようにするか、だ。
俗にいう「呼ばれる」とか「試される」とかいうやつなのかもしれない。
しかし誰もがそこに辿り着けるわけではない。
準備と強い意志だけがそこに連れて行ってくれる。
別に神様の存在とか超自然現象とか、そういうものは必要ない。
原生林には原生林のルールがあって、それに馴染まなければならないのだ。
あぁ、やはり言葉の本質は嘘だなぁと思い知らされる。
これ以上説明するのはやめておこう。
原生林にたどり着いた人だけが分かればいいのだから。
今年の原生林への旅はいったいどんな響きを持って、コンタクトを取ってくるのだろうか。
嘘をつかずに、旅をしよう。
そして、それは今後の人生で美しい音色を奏でることになるだろう。
自分の人生を歩むにはどれだけ「嘘をつかないようにするか」だと原生林の旅は教えてくれるだろう。
さぁ、原生林で会いましょう♪